気分の浮き沈み、不眠、「自分のことが好きになれない」、孤独感などに苦しんでいた女性⑩婚約破棄編
こんにちは。心理学博士でディマティーニ・メソッド・ファシリテーターの古宮昇です。
うつ、パニック、不眠、極端な感情のアップダウン、激しい孤独感、男性への激しい不信感と性への嫌悪感などに苦しんでいた30代の女性がいます。
彼女はディマティーニ・メソッド®を通して、②母親への怒り、③父親への怒り、④レイプされた経験の傷つきに取り組み、それらの症状が短期間のうちに、ずいぶん軽快もしくは消失しました。
ぐっすり眠れるようになるとともに、パニックはなくなり、男性への不信感もほとんど消失しました。
また、恋人からしばらくイーメールが来ないからといって以前のような強い恐怖に襲われることもなくなりました。
(⑤見捨てられ不安編 ⑥ディマティーニ・メソッド®から得た洞察編)
ところがその後、突然の危機に襲われます。
彼女は博士号取得を目指して人並はずれた努力をしていたのですが、大学院生時代の恩師から「博士号はまだ無理だ」と言われたのです。
彼女はそれをきっかけに激しく落ち込み、仕事に行けなくなり、自殺願望まで抱くようになりました。
しかしその危機も2時間半のディマティーニ・メソッド®セッションによって乗り越え、以前のように元気になりました。
(⑦恩師の拒絶と抑うつ編 ⑧心の整理と人生の目的の発見編)
その女性が、ディマティーニ・メソッド®を通して得た、大切な学びをシェアしてくださいました。
その気づきとは、人生に起きる出来事はすべて、私たちが最高に成長し、最高の自分になって生きてゆくために、必要だから起きるということです。
最初から読みたい方はこちら
気分の浮き沈み、不眠、「自分のことが好きになれない」、孤独感などに苦しんでいた女性①
では、その女性の手記第10回目をどうぞ。
目次
何気ない一言からみえた心の傷
13歳のとき、見知らぬ男性からレイプされた経験、
そして浮気を繰り返していた父親を対象にディマティーニ・メソッド®をおこなって、心の痛みを解決してから、
恋人とのセックスが至福の経験になりました。
セックスは女性としての私を蘇らせてくれたのです。
しかし、私の根底には、まだ癒えぬ「見捨てられ不安」が存在していました。
それは恋人との関係において顕著に現れます。
私と恋人との関係はとても良好なものになりましたが、ある日、危機が訪れます。
いつものように彼とメールをしていたときのこと。
彼は仕事で大きなプロジェクトが迫っており、それが始まると忙しくなるためしばらく会えなくなります。
そこで私は彼に、彼の持っている本をそのプロジェクトのあいだ貸してほしいと頼んだのです。
そのことについて彼から、
「僕とのつながりを保つ目的で僕のものを持とうとは、しないでほしい」とメールがきたのです。
あとで聞いた話では、そこには彼なりの思い遣りがあり決して私を拒絶したわけではなかったのですが、
その時の私には、こう見えたのです。
『僕とのつながりを持とうとしないでほしい』
彼とつながりを持ってはいけないなら、私は今まで彼から貰った贈り物など、すべて彼に返却しないといけないのではと考えました。
そしてそれは、二人のお別れをも意味していました。
つながりを持とうとしない関係なら、無いに等しいのでは、そう感じたのです。
私はその日、夜通し泣き続けました。
そして一睡もしていない朦朧とした状態で、彼に
「今までもらったものをすべて返す」とメールしました。
しばらくして、その旨を承知したという連絡が入りました。
私は職場へ向かう電車の中で、何度も「これでいいんだ。これで良かったんだ。つながりを持とうとしてはいけない人なんだ」と自分に言い聞かせていました。
しかし職場に足を踏み入れる前に、本当にこれで良かったのかと振り返りました。
『ひょっとして、彼には彼なりの考えがあって、私を拒絶したり傷つけたりするつもりじゃなかったのでは?
私はまた、彼が私を傷つけたと思い込んでしまっただけで、
それは私の過去の心の傷からくるものなのでは?』そう考えるに至りました。
仕事は理性を働かせてなんとか滞りなく終えることができましたが、
自宅に帰ってからは涙がこみ上げてきて、もうこれで終わってしまうのだろうか、という後悔でいっぱいになりました。
私はどうしてこんなに過剰に反応したのだろう?その原因を知りたい。
その原因を解消しないことには、また同じことを繰り返してしまう。
そう思った私はすぐ、ファシリテーターにセッションの依頼をしました。
すると奇跡的に、なんと30分後にセッションを受けることができたのです。
「つながり」から見えてきた「見捨てられ不安」の原因
セッションを受けて分かったこと。
それは、「つながり」という言葉がとても大きなキーワードだったということです。
そしてその「つながり」は、私が抱えていた「見捨てられ不安」と直接的に関わっていたのです。
それは、4年前の春、入籍・挙式一か月前に、突然婚約を破棄された経験から来る不安でした。
当時私は、プロポーズされ、結納も済ませ、結婚式や新居の準備などすべて終え、人々に招待状も出し、あとは式当日を待つだけでした。私の父などは、バージンロードで変な歩き方をして私に恥をかかせないよう、こっそり歩き方の練習をしていたぐらいです。
母も、自分が結婚式のときに着た特注の白無垢を、今度は私が着ることを大変喜んでいました。
ところが入籍・挙式の一か月前、突然彼が破棄を申し入れてきたのです。
理由は、彼のご両親、とくにお父様の反対です。
彼は会社の三代目であり、取締役として会社を継ぐことが決まっていました。
二代目のお父様は、研究を続けたいという私の気持ちが、家族経営の会社の方針とそぐわないことを前から心配していらっしゃいました。
結局、土壇場になって、結婚は白紙にされたのです。
自殺未遂と多額の慰謝料
しかし私は、新居に一人籠城し、白紙は認めないと必死で抵抗しました。
入籍・挙式予定日までの一か月、私は一人新居に籠り続けました。
食事も喉を通らず、ずっと寝たきりの状態で、何も考えられないのに涙だけがとめどなく溢れる、そんな毎日。
そして、入籍・挙式のはずだった当日、私はついに自殺を試みました。
「私は本当はこの日、ドレスを着ているはずだった・・・みんなから祝福されるはずだった・・・」。
遠のく意識のなか、そんなことを考えていました。
目が覚めると、私は病室にいました。
しばらくして実家に戻ると、親同士が慰謝料のことで揉めていました。
私は何度も元婚約者にメールしましたが、何の返信もありません。
数日後、やっと元婚約者からメールが届き、明日迎えに行くから家から出てきてほしいと言われました。
私はまた彼と会えることが嬉しくて、理由も聞かずに「はい」と返事をしました。
次の日、迎えに来た彼の車に乗りました。
会話もほとんどないまま、連れて行かれたのは弁護士事務所でした。
そこで私と元婚約者はそれぞれ別室に案内され、私は知らない弁護士から挨拶もほどほどに一枚の紙を見せられ、
「今ここでこれにサインしてもらわないと、今後一切慰謝料は支払えない」と言い渡されたのです。
私はお金など一円も要らなかった。
ただ愛する婚約者の側にいたかった。
ですが、一人娘を自殺未遂に追いやったと裁判へ動き出していた両親の気持ちを考えると、引き裂かれるような痛みを味わいました。
泣きながら必死で考え続け、結局私はサインをしました。
あれは、全身の細胞が死滅したかのような苦しみでした。
そのあと彼は私を車に乗せると、「僕は仕事があるから」と、私一人を繁華街の真ん中に降ろし、そして走り去りました。
それが彼との最後になりました。
私はその場で大号泣しました。
繁華街の雑踏の真ん中でしゃがみこみ、3時間も泣き続けました。
婚約者を失ったからこそ得られたギフト
つぎのセッションでは、この婚約破棄のときの心の痛みを対象にワークを行うことになりました。
恋人に対する私の強烈な「見捨てられ不安」は、この婚約破棄のときに、慰謝料だけ渡されて繁華街に置き去りにされたことに起因していると、感じたからです。
私は置き去りにされたあの日、婚約者との「つながり」が永遠に絶たれたのです。
セッションでは、以上のような詳しい内容は一切話す必要はありません。
解消したいテーマをファシリテーターに伝え、ファシリテーターの質問に答えていくだけです。
私はファシリテーターの誘導のもと、4年前の婚約破棄で、一番辛かった場面を思い出しました。
それは、自殺未遂のあと病室で目を覚ました場面でした。
私はその時、一人ぼっちだと思っていました。
しかしセッションを受けて、私は一人ではないことが分かったのです。
病室のベッドで寝ていた私の周りには、13人の偉人の天使がいました。
ケプラー、プラトン、ニュートン、カント…。
彼らが私のベッドの周りに立ち、私を見守っていました。
私は一人にされたと思っていましたが、そうではなく、13名の偉人が、天使として身近にいてくれたことが分かったのです。
その瞬間、一人絶望に追いやられた私の気持ちは解消しました。
偉人とは、過去に存在していた人物であり、いわば精神的な存在といえるでしょう。
私は、元婚約者から得ていた精神的な支えを、偉人たちの魂から得ていたのです。
「私にはこんなにも側にいて支えてくれる存在がいたんだ」と、明確に気づきました。
一人きりの絶望感は、多数の存在による精神的なサポートのおかげで、明るい未来へと、この瞬間、確かに変転したのです。
内的資質や魅力が高まったからこその新しい出会い
さらに、もう一つの場面の解消もファシリテーターにお願いしました。
それは繁華街に置き去りにされた場面です。
元婚約者が与えてくれていた特性は、彼と別れたあとには、何人かの人たちに分散されてわたしの人生にもたらされていたことが、ワークを通して分かりました。
例えば精神的なサポートは、指導教官や哲学者たちから得ていました。
私が求めていた一途な愛は、脇目もふらず一途に研究に没頭する私自身の姿勢として人生に存在していました。
デートをして美味しいものを食べたりする人生の喜びは友人から得ていました。
そのように、元婚約者から得ていた性質は、私の人生にすべて存在していたのです。
そして指導教官、偉人の魂、研究、友人たちのおかげで、私は自分のしたいことに全力で没頭できる数年間を送ることができました。
その結果、私はもっとも権威ある学会誌に論文を掲載することができたのです。
そして私は、論文が掲載されたことで、その面において自分を愛せるようになりました。
自分自身への愛が深まったのです。
さらには価値のある論文が書けたおかげで、他の研究者たちから私の長所をより認めてもらえるようになりました。
つまり、外見だけではない、知的な内面の魅力を他者に知ってもらうことに繋がっていたのです。
すると、内的資質や知的な魅力を知った上での出会いが広がり、より理想の男性に出会えていたことが分かりました。
そして、今の恋人に出会ったのです。
セッションの最後に、ファシリテーターが私に聞きました。
「今、置き去りにされた場面に戻るとどんな気持ちですか?」
私は即座に笑顔でこう答えました。
「あなたが自分から婚約破棄してくれたおかげで、
私は慰謝料という研究資金をたくさんもらえたし、論文も書けたし、内的な魅力も深まった。
ほんと、自分から破棄してお金までくれてありがとう!!」
解説:人生において何の特性を得ることも失うこともない
人生に起きる出来事はすべて、私たちが最高に成長し、最高の自分になって生きてゆくために、必要だから起きます。
この女性の場合は、婚約を破棄されたことによって、彼女にとって人生でとても大切な、研究を続けるために最良の環境とお金がもたらされました。
もしも仮にあの婚約者と結婚していたら、彼女は親族企業の重役の妻として大きな責任と義務を負うことになり、研究者として活躍することはできなかったでしょう。
さらには、この文章には書かれていませんが、彼女はこの経験から、少々の困難だって「なにくそ」と乗り越える強さも得ていたかもしれません。
それは今後、彼女が人生で成し遂げたいことを成し遂げるために必要な資質だったでしょう。
また、私たちは人生において何の特性を得ることも失うこともありません。
これはほとんどの人が分かっていないことです。
それはいったいどういうことでしょうか?
わたしたちは何かを「無くした」とか「得た」と考えるものです。
「恋人を失った(恋人ができた)」「離婚した(結婚した)」「お金を失った(お金が入った)」などなど。
それら外的な「もの」は確かに手に入ったり失ったりしますが、
それらの「もの」がわたしたちにもたらしている特質や特性は、
決してわたしたちの人生において増えたり減ったり無くなったりはしないのです。
そのことが分からないから、私たちは大切な何かを「失った」と思うと、
嘆き、悲しみ、怒り、反対に、大切な何かを「得た」と思うと有頂天になります。
そしてその有頂天の状態は後にかならず、対極の落胆や落ち込みを招きます。
そうして感情のジェットコースターに翻弄されるのが、ほとんどの人々の生き方です。
大金を失って得たこと
例えば私はかつて、大金を騙されて失ったことがありました。そのとき考えたのです。
「いったい大金を失ったことによって、ぼくは何の大切な特性を失ったと思っているんだろう?」
答えは、「豊かさ」、「将来に対する安心感」、「仕事で成果を出したことを確認する喜び」でした。
つぎに考えました。
「じゃあ、大金を失ってから、ぼくはどういう方法でそれらを得ているだろう?」
よく見てゆくと分かってきました。
その投資は妻と話し合っておこなっていました。
大金を失ってから、妻と話し合い、一緒に対策を考えていました。
それによって妻とより助け合うようになったし、妻と出かける時間も増えていました。
そのことで、人生の豊かさ感と、将来への安心感を得ていました。
また、仕事で成果を出したことを確認する喜びは、大金を失った同時期に出版された論文と著書から得ていました。
私は大金を失っても、お金がもたらしてくれていたと思っていた価値あるものは、何も失ってはいなかったのです。
つぎに私は考えました。
「じゃあ、今回騙されて大金を失ったことが、ぼくにどんなプラスをもたらしているだろう?」
気がつきました。
私はお金を失った経験によって、人を安易に信用してはいけないことを学んだし、投資に慎重になりました。
そのことによって、老後に騙される可能性が減りました。
お金を失ったのが若いときでしたから、働いて取り返すことができました。
しかし、もしも老後に大金を失ってしまえば、おそらく若いときよりも大きな資産を持っているでしょうから、失う資産の額はずっとずっと大きかったでしょうし、それ以降バリバリ働いて収入を得ることも困難だったでしょう。
さらには、わたしは大金を失ったことによって「もっと講演やセミナーをして収入を得よう」と決めました。
その結果、より多くの人たちの役に立ち、喜んでもらうことができました。
そして、人々の役に立つことは私にとって高い価値のあることです。
複数の人々から分散してもたらされる方が好都合だった
婚約を破棄された女性の場合に戻りましょう。
彼女の場合、もと婚約者が与えてくれていた価値ある特性は、
他の人たちに分散されて人生にもたらされていました。
そして、彼女がディマティーニ・メソッド®によって気づいたかどうか定かではありませんが、
それらの特性がたった1人の人からもたらされるよりも、
彼女のその時期には、複数の人々から分散してもたらされるほうが、
彼女にとって大切なことを得るために好都合だったはずです。
だからこそ、1人からもたされていた状況が変化し、複数の人たちからもたらされるようになったのです。
この女性は人生をもっと軽やかに生きてゆくために、
そして喜びと充実をもっと増やすために、さらにディマティーニ・メソッド®を受けました。
その結果、研究者として生きてきた彼女にはそれまで眠っていた、家庭的な資質が開発されることになりました。
将来、よき妻、母になるために必要な資質です。それについては最終回である次号に続きます。
古宮昇(こみや・のぼる)
最初からもう一度読みたい方はこちら
気分の浮き沈み、不眠、「自分のことが好きになれない」、孤独感などに苦しんでいた女性 ①DMは不要と思っていた
②母親の無視・無関心編 ③父親への怒り・性への嫌悪感編 ④レイプ体験編
⑤見捨てられ不安編 ⑥ディマティーニ・メソッド®から得た洞察編
⑦恩師の拒絶と抑うつ編 ⑧心の整理と人生の目的の発見編 ⑨不倫編