気分の浮き沈み、不眠、「自分のことが好きになれない」、孤独感などに苦しんでいた女性⑨不倫編
こんにちは。心理学博士でディマティーニ・メソッド・ファシリテーターの古宮昇です。
うつ、パニック、不眠、極端な感情のアップダウン、激しい孤独感、男性への激しい不信感と性への嫌悪感などに苦しんでいた30代の女性がいます。
彼女はディマティーニ・メソッド®を通して、②母親への怒り、③父親への怒り、④レイプされた経験の傷つきに取り組み、それらの症状が短期間のうちに、ずいぶん軽快もしくは消失しました。
ぐっすり眠れるようになるとともに、パニックはなくなり、男性への不信感もほとんど消失しました。
また、恋人からしばらくイーメールが来ないからといって以前のような強い恐怖に襲われることもなくなりました。
(⑤見捨てられ不安編 ⑥ディマティーニ・メソッド®から得た洞察編 ⑦恩師の拒絶と抑うつ編 ⑧心の整理と人生の目的の発見編)
その女性が、ディマティーニ・メソッド®を通して得た、大切な学びをシェアしてくださいました。
その気づきとは、人生に起きる出来事はすべて、私たちが最高に成長し、最高の自分になって生きてゆくために、必要だから起きるということです。
最初から読みたい方はこちら
気分の浮き沈み、不眠、「自分のことが好きになれない」、孤独感などに苦しんでいた女性①
では、その女性の手記第9回目をどうぞ。
目次
セックスへの罪悪感は不倫だからではなく過去のトラウマによるものだった
私の恋人は、既婚男性でした。でも、彼になかなか心を開くことができません。
彼に傷つけられて虐げられるんじゃないか、という恐怖がいつも付きまとうからです。
私は最初、それが「不倫だから、遊ばれているからだ」と思っていました。
私がどれだけ好きでも、向こうは私のことを真剣に考えていないし、話が合って一緒にいて楽しい、セックスのできる都合の良い女性としか思われていないと、そう思っていました。
世の中の不倫をしている女性の多くがそう考えるように、私もそう感じていました。
そのおかげで、私は「不倫をしている自分」が受け入れられず、そんな自分を好きになれませんでした。
そのせいで、何度も彼と別れたいと考えました。
不倫関係だからこそこんなに辛いのだと思ってきましたが、実は、そうではなかったことが分かりました。
二回目のディマティーニ・メソッド®を通してレイプされた心の痛みに取り組んだあと、苦しみの原因に気がついて行きました。
私は彼に対して「傷つけられて虐げられる。都合の良い女でしかない」と思い込んでいました。
彼との関係に苦しみが多い原因は不倫関係によるものだと考えていましたが、本当はそうではなく、20年前のレイプ体験の苦しみこそが本当の原因だったのです。
セッションを受けて自分のレイプ体験についてのあまりに辛い憎しみ、自己否定感、性への嫌悪感などの感情が解消されたときから、先述したように、私と彼の関係は劇的に変わりました。
④レイプ体験編はこちら
気分の浮き沈み、不眠、「自分のことが好きになれない」、孤独感などに苦しんでいた女性④レイプ体験編
まず、彼とセックスをすることに対する罪悪感がなくなりました。それまでは
「不倫だし、奥さんがいるのに、私の行為はたくさんの人を傷つけている…」
そう感じていて、それが辛さの一つでもありました。
ですが、セッションを受け、セックスが男女間においてかけがえのない行為であると理解できた以降、彼との間にあった罪悪感を感じていない自分に気づいたのです。
私が恋人に抱いていた「傷つけられて虐げられる。都合の良い女でしかない」という被害者意識は、私をレイプした見知らぬ男性に対するものであり、恋人とは無関係の気持ちだったのです。
私は、レイプした見知らぬ男性に対する感情を恋人に投影していたのです。
セックスについての罪悪感が、不倫関係での苦しみの根本だった
私は次のように感じていたために苦しんでいたんだ、と気がつきました。
「私はレイプされたことで無情に汚された。
しかし不倫関係だから、こんなに汚い自分の性であっても、それを使って彼をつなぎ留めるしかない」。
私の心には、
「本当はセックスが無くても愛してほしい(セックスしたくない)」
という気持ちと同時に、
「セックスがなければ求めてもらえない(セックスしなければ)」
という気持ちもあり、その二つの思いが私の中でせめぎあっていました。
セックスを愛していないのに、セックスしなければならない。
そんな自分のことが惨めで哀れでした。
恋人とのセックスもそれほど好きではなく、どちらかというと恋人に合わせている部分が多くありました。
気持ち良くないわけではないのですが、身体が感じる快楽に、心が追いついてこないのです。
身体だけ反応しても、やはり心も同じだけ反応しないと虚しいだけでした。
そして私は、この虚しさを理解してくれない恋人、そしてさらに、今までお付き合いしたすべての男性に対して、怒りを持ち続けていたのだと思います。
しかしその怒りを解除するためには、私自身が自分の心と身体を愛する必要があったのです。
セッションを受けた後も、変化は生まれ続けている
私にとっては、私を汚したセックスを提供しなければ異性から愛情も関心も与えてもらえないということが、とても重荷であり、不快でもありました。
だからこそ私は、過度に精神世界に関心をもち、知性・理性・悟性の世界である哲学の書籍を読みふけるようになったのだと思います。
心の世界、精神世界のなかでは、私はセックスという身体を伴う行為を『しなければならない』という足枷が外せました。
純粋な精神の世界において、私はセックスから解放されました。
そんな私も、レイプ体験が解消されてから、恋人とのセックスをやっと受け入れることができました。
彼は私の嫌がることをしないし、身も心も、とても大切に、愛してくれていることがはっきりと分かったのです。
私は今まで、これほどまでに幸せを感じるセックスをしたことがありませんでした。
ありのままの自分を出せて、ありのままの自分を受け止めてもらえる。
この安心感が何よりも心地良いものだと知ることができたのは、セッションを受けたあとも、自分自身の変化について意識していたからだと思います。
ディマティーニ・メソッド®に限らず、すべてのセラピーに関することですが、セッションを受けてそれで終わりなのではなく、そこで得た気付きが自分自身をどう変化させていったのか、どんなふうに変わっていったのか、それを体験していくなかに、本物の叡智が宿っているのだと思います。
叡智は、私たち自身の体験のなかに息づいているのです。
解説:性はさまざまな傷つきと深く結びついている
性は、私たちの心にある様々な傷つきと深く結びついています。
そのため、性のトピックは私たちの中に、怒り、傷つき、悲しみ、不寛容、軽蔑などの思いを容易に喚起します。
そのため、普段は理性的で客観的に考えることのできる人も、性の話題になると、たいへん偏ったり、視野が狭くなったり、攻撃的になったりしがちです。
ここで、「性がさまざまな傷つきと深く結びついている」とはどういうことかを説明します。
私たちは幼いころ、親からの無条件の愛情を強烈に求めました。
しかし、完璧な親はいませんし、完璧な子育てもあり得ませんから、わたしたちは誰もが、程度の差はあれ、親から無条件には愛してもらえなかった寂しさ、悲しさ、そして怒りを自分でも気づかない心の奥に抱えています。
そして人との性関係は、私たちが幼児だったころ、お母ちゃんのお乳を飲んだり、お母ちゃん、お父ちゃんに抱っこされたりしたころの、心身ともに密接な愛情関係を、私たちの心によみがえらせます。
ところが私たちの心では、「お父ちゃんもお母ちゃんも、どんなぼく・わたしでもいつもすべて受け入れ、完全に愛してくれている」という実感は、程度の差はあれ、欠如しています。
性関係を結ぶと、普段は気づかない心の奥底にあるその根源的な愛情飢餓感、悲しさ、怒りが刺激されます。
同時に、その心の痛みが深い人ほど、幼児のころに抱いた、親の心身ともに密着した愛情を求める気持ちが湧き上がります。
私たちが性関係において容易に傷ついたり、怒ったり、また有頂天になったり「子ども返り」したりするのは、そのためです。
そしてそのことに関連して、私たちは性について話したり考えたりするときに、心にずっと抱えてきた傷つき、寂しさ、怒りなどが刺激され、容易に怒ったり、不寛容になったり、傷つきを感じたりしやすいのです。
ですから今回のようなセックスの話題は、それを持ち出すだけで不快に感じる人たちも多いし、またさらに、「不倫」という社会的・倫理的に間違っているとされる話題になると、「悪である」という正義の武器を持ち出して、自分の心の痛みに向き合う代わりに、他人を弾劾することも、しばしばおこなわれます。
ディマティーニ・メソッド®ファシリテーターや、まともなプロの心理療法家は、来談者が不倫をしているからといって批判的な思いを抱くことはありません。
もしそういう思いが湧けば、そのときには誠意あるファシリテーター、心理療法家であれば、批判的な思いの原因である自分自身の未解決の心の痛みに取り組むでしょう。
生きた真実として心から腑に落ちると癒しと成長が起きる
この手記の女性について考察を深めましょう。
彼女はレイプされた体験にまつわる激しい心の痛みを解決したために、恋人が、決して彼女のことを虐げようとか裏切ろうとはしておれず、それどころか、彼女のことをさまざまな面で大切に扱っていることが見えるようになりました。
それによって、恋人の優しさをさらに受け取ることができるようになりました。
すると苦しみが減るとともに、恋人に対して秘かに感じていた「私の苦しみを分かってくれない」という怒りがなくなりました。
そしてセックスもずっと喜びの多いものになったのです。
レイプにまつわる苦しみを抱えていた彼女は精神世界の本をよく読んでいました。
その理由の一つは、精神世界に浸っているときには、性や身体にまつわる苦しみを忘れることができたからです。
スピリチュアル好きの人たちの中に、そのように、心の癒されない痛みからの逃避として、スピリチュアルな本や教えに没頭する人も少なくはありません。
しかし、どれほどスピリチュアルな学びをしても、根本にある心理的な痛みを解決しなければ、スピリチュアルな著者や講師たちが語る本当の平和は得られません。
スピリチュアルな本にはよく、「すべては完璧なことが完璧なタイミングで起きている」、「愛がすべてだ。それ以外は幻想だ」、「あなたはそのままで素晴らしい」といった楽天的なメッセージが書かれています。
スピリチュアリティ好きな人たちはそんなメッセージを読んで「すばらしい」とか「あぁ、癒された」と言いますが、本当に腑に落ちて理解はしていません。
そのため、「イヤなことが起きた」と落ち込んだり、「自分のことが好きになりたいのになれない」と感じて苦しんだりします。
ディマティーニ・メソッド®は、すべてが愛であり、すべてが完璧であり、あなたも他人もみな同じ素晴らしい存在だ、というスピリチュアルな叡智が、生きた真実として心から腑に落ちて理解できる効果的な援助法です。
この女性はこのあとさらに、ディマティーニ・メソッド®を通して癒しと成長に取り組み、その結果、近い将来によい妻になりよい母になるために大切な、豊かでより深い女性性を開花させました。それについては次回お伝えします。(次回 ⑩婚約破棄編はこちら)
古宮昇(こみや・のぼる)
最初からもう一度読みたい方はこちら
気分の浮き沈み、不眠、「自分のことが好きになれない」、孤独感などに苦しんでいた女性 ①DMは不要と思っていた
②母親の無視・無関心編 ③父親への怒り・性への嫌悪感編 ④レイプ体験編
⑤見捨てられ不安編 ⑥ディマティーニ・メソッド®から得た洞察編
⑦恩師の拒絶と抑うつ編 ⑧心の整理と人生の目的の発見編 ⑩婚約破棄編