-
目次
はじめに
- みなさんは、「パニック障害」という言葉を聞いたことがありますか?
私はこれまでの人生の中で何人も「パニック障害」を抱えている人にお会いしたことがありますが、日常生活の様々なことができなくなってしまい、苦しい思いをされています。
最近は、徐々に社会的に認知されつつありますが、まだまだ世間の理解は少ないように思います。
私はこれまで長嶋一茂さんの本を読んだり、その他の関連書を読み、貴重な学びをいただきましたが、今回読んだタレントの大場久美子さんの『やっと。やっと!パニック障害からぬけ出せそう….』は衝撃的な内容でした。芸能人の彼女がここまで赤裸々に御自分の体験をありのままに語っていることに衝撃を覚えました。
しかし、「パニック障害」にとって、この赤裸々な自分の公表ということが非常に大切な意味をもっていることが後々わかってきました。
それは芸能人の彼女にとってというよりも、大場久美子さんという一人の人間にとって、そして、同じ障害に苦しんでいる方々にとって、ありのままの自分を公表するということがとても大事な意味をもっていることを学んだのです。そのことは、後で書きたいと思います。
以下、この本を読んで私なりに学んだ内容をシェアしたいと思います。そして、少しでも今「パニック障害」で苦しんでいる方々だけでなく、人生に悩んでいらっしゃる方々の少しでもお役に立てればと思います。
「パニック障害」は幻想から目覚めるきっかけ
第一に、パニック障害は幻想から目覚めるきっかけを与えているということです。
私たちはこの現代社会において、無意識に様々な形で幻想を抱えていきています。その際たるものが、「私たちはいつもポジティブでいなければならない」というものではないでしょうか?
大場久美子さんの場合は、自分は完璧でなければいけないという思いがあったようですが、この「パニック」を体験して、いろいろな日常的なことができなくなって、そのおかげで、完璧でなくてもいい、「まあ、いいか」と時には思ってもいいんだということを実感されたそうです。
そもそも、毎日の生活の中で24時間365日、完璧にポジティブな人はいません。ポジティブになればなるほど、宇宙の力学はバランスをもたらす方向に働きますので、現実的にはネガティブだと思える体験をどんどんするようになってしまいます。
日常で体験する出来事に対して、極端にポジティブになりすぎたり、極端にネガティブになりすぎたと思ったら、その逆の面を発見することも、生きる知恵として大切なことであると思います。私たちが幻想を抱え続けていると、宇宙は様々な形で「バランスを崩していますよ」「幻想を見てますよ」というメッセージを送ってきます。心身の病気もそのフィードバックの一つなのです。
「パニック障害」は自分に正直になれるきっかけ
第二に、パニック障害は自分に正直に正直になれるきっかけを与えているようです。「パニック」になると、それまでできていた色々なことができなくなるので、他の人と比べて、どんどんあせったり、まだおきてもいないようなことで必要以上に不安になったりする傾向が出てくるようですが、これも「まあ、いいか」のように、本当に今の自分にとって、それをすることが必要不可欠なのか、他の方法でその気持ちを満たすこともできるのではないか、と正直に自分に向き合えるきっかけになるようです。
「パニック障害」は人に助けを求めてもいいということを教えてくれる
第三に、パニック障害は人に助けを求めてもいいんだということを学ばせてくれるきっかけになるようです。
私達は小さな頃から、家庭、学校、会社、マスメディアを通して「自立」ということが強調されて育ってきます。
特に、現代は人に助けを求めること、イコール迷惑をかけることとして慎むようにしなければいけないという無言のプレッシャーが色々なところで働いているようです。その結果、多くの現代人は自分から助けを求めることを恐れ、自分の中に閉じこもってしまう傾向があります。
しかし、パニックになると、人の助けなしに生きていくことはできなくなります。それはそれまで以上に、人とのつながりを強烈に実感させてくれる体験が多くやってくるようです。
そもそも人の助けなしに生きられる人はこの地球上にはいないので、人に助けを求めるという行為自体は自然な営みの一つです。それに、人に助けを求められた人にとっては、それは自尊心を高めることにもつながる思いが心の中にわきおこってくるものです。
「ああ、おれは頼られている」「人から助けを求められるくらい信用されている」など、心の中で自己重要感を感じるのです。
もちろん、「かったりいなあ」「めんどくさいなあ」という気持ちも沸き起こってくるかもしれませんが、まったく誰からも助けを求められない人生を考えると、やはり、誰かに頼りにされるとうれしいという側面も否定できないのではないでしょうか。
だから、人に助けを求めてもいいのです。パニックは、その当たり前のことに気づき、人に感謝できるきっかけをもたらすようです。
「パニック障害」は今ここに対する感謝を教えてくれる
第四に、パニック障害は、いまあること、いまもっていることに対する感謝を体験させてくれるようです。
パニック障害になると、外に出かけること、乗り物に乗ること、ひいては、食事をとることに対しても消極的になったり、恐怖を感じたりするようになるそうです。
しかし、冷静になるとその状況に対して、まったく悲観的になるかというとそうでもなく違う部分も見えてくるようです。
何もできないということにフォーカスをすると、それは落ち込んだりすることになると思いますが、でも、その状況を冷静にみると感謝できることが見えてくるようです。
たとえば、先ほど人に助けを求めるということを書きましたが、究極はいくら人が何をしても、パニックの人を助けることはできないそうです。
しかし、何もしなくても、ただいっしょにいてくれるという事実が大場久美子さんにとって、大きな力になったそうです。
私達は日々の生活の中で「すること(doing)」に焦点をあてて、「あること(being)」ということの大切さを忘れがちです。
しかし、いまここにいるということは、ものすごいパワーをもっているのです。そのことに心から感謝できたとき、大場さんはただそこにいるということの大切さを実感されたようです。
「パニック障害」はそれまで気がつかなかった愛に気づかせてくれる
第五に、パニック障害はそれまで気がつかなかった愛に気づかせてくれるきっかけになるということ。これは同じくパニック障害になった長嶋一茂氏の本にも書いていますが、普段は気がつかないようなものが自分の味方になっていることに気がついたりするそうです。長嶋さんの場合は、子どもが幼い頃に遊んでいた人形だったそうです。そして、大場さんの場合はピエロの人形が支えになったそうです。
宇宙は私達に絶対に一面的な体験をさせてくれません。例外はありません。自分が試練だと思える体験をしているときには、必ず同時に同じだけ支援ももたらしてくれているのです。それは、人間かもしれませんし、人間以外のものかもしれません。
忙しく騒々しい日常生活、他の人の価値観に支配されそうになるこの現代社会においては、多くの試練を発見することは容易ですが、実はそこには必ず支援も存在しているのです。私達が試練と支援を同時に同じだけ発見できたとき、私達は人知をこえた真実の愛を体験します。
そうはいっても、誰も何も自分の味方になってくれないと思えるときもあるでしょう。そうしたときは、大場さんもいっていますが、自分のことを思いっきり抱きしめてあげればいいのです。自分で自分のことを愛しちゃいけないって誰が決めたんですか? 自分のことを愛したかったら思いっきり愛したっていいんです。
パニック障害はありのままの自分を愛するきっかけをもたらしているともいえるようです。
つまり、パニック障害はそれまでの人生で気がつかなかった人生の深遠な愛を体験するきっかけを与えてくれているといえるかもしれません。
「パニック障害」は陰陽の法則を教えてくれる
第六に、パニック障害は究極のネガティブ体験はポジティブ体験に転じるということも教えてくれるそうです。
大場久美子さんは、パニック障害の真っ只中にあったときに、何度か自ら自分の命を投げ出そうとしたことがありました。
実際に、行動に移したそうです。
しかし、そうした行動をこれでもかというくらい体験した後は、不思議とそういう気持ちが起こらなくなったようです。
これは陰陽の法則を表す典型的な例だと思います。私達は悲しみや怒りなどの感情を究極まで体験すると、そういう気持ちがなくなったりすることがあるようです(そうでない事例ももちろんありますが)
そうすると、そこから心が前向きな方向に動き出すこともあるそうです。
私もセッションなどをやっているときに、ネガティブだと思える体験をしたときのことをクライエントさんにできるだけリアルに思い出していただくことがありますが、自分のネガティブな感情を体験しきると、そこから不思議とメリットを発見できたり、方向性が見えたりすることがあります。「災い転じて福となる」というのは真実のようです。
「パニック障害」は私たちにもう一度子ども体験をさせてくれる
第七に、パニック障害は子ども時代の再体験という側面があるのではないかということです。
大場さんのパニックの症状は、お母様が他界された直後からはじまったそうです。大場さんはお母様の喪失感から気持ちの整理がつかない状態でいらっしゃったそうです。そんな中、パニックが突然襲ってきたそうです。
大場さんの記述を読ませていただくと、お母様は本当に心から大場さんのことを愛していらっしゃり、様々な形で無数のサポートを生前与えてくれていたようです。
パニック障害になることで、さきほども書いたように、他の人たちの助けを求めるということがそれまで以上に必要になったわけですが、それは大場さんが心の中でお母さんに対して求めた
思いだったのかもしれないと私は思いました。
大場さんは症状が出たときに、誰かにハグしてもらうことに大きな安心感を感じたようですが、それは実は形を変えたお母さんからのハグだったのかもしれません。いいかえると、亡くなったお母さんが様々な周囲の人々の直接間接のハグという形で存在していたのではないかと思うのです。
「パニック障害」は人生のシンプルさを教えてくれる
第八に、パニック障害は過不足を取り除いて、人生のシンプルさを教えてくれる側面があるということ。
パニックを体験すると、長嶋さんも大場さんも共通して、生活がとても単純で簡素で質素でシンプルなものになったようです。
私達現代人は、いつも不足感をかきたてる「消費社会」の中で生きています。つねに、何かが足りない、買わなければいけないという思いにかきたてられます。しかし、冷静に考えると、私達はどれだけ本当に必要なものを手に入れているでしょうか?
さきほども書いたように「すること(doing)」焦点を当てているために、「あること」(being)がよくみえず、無駄だと思えることをどんどん周囲に溜め込んでいく傾向があるのではないでしょうか?
しかし、パニックを体験することによって、自分にとって必要なものよりも必要なもの、できないこよりもできることに焦点が向くようになったようです。それは消費社会の他人の視点を通さないありのままの自分の視点を通じて自分を見ることです。
その視点を獲得したことで、長嶋さんも大場さんもありのままの自分(ポジティブもネガティブも)を受け入れる、あるいは愛することができるようになったようです。
ちなみに、ありのままの自分を愛せるようになったということをどのように確認することができるでしょうか?それは、自分をありのままに自己開示できることです。今回、大場さんがこうして出版して自己開示されたことは、ありのままの自分を受け入れている、愛しているということの表れだと思います。
まとめ
「パニック障害」と呼ばれる現象は、以下のような大切なメッセージを私たちに投げかけているようです。
「いつもポジティブでなきゃ」という幻想から目覚めるきっかけをくれている。
不必要な不安を取り除き、自分に正直になれるきっかけをくれている。
人に助けを求めてもいいということを教えてくれる。
今ここに対する感謝を教えてくれる。
実はいたるところにある、それまで気がつかなかった愛に気づかせてくれる。
究極のネガティブを体験しきるとポジティブに転じるという陰陽の法則を教えてくれる。
私たち現代人がし残した子ども時代を体験させてくれる。
人生はシンプルさであるということを教えてくれる。
オーストラリアより愛と感謝をこめて
野中恒宏
注:この記事は医学的アドバイス、あるいは代替医療を目的で書かれたものではありません。現在「パニック障害」で苦しんでいらっしゃる方、あるいはその疑いのある方は、専門の医療機関に行かれることをおすすめします。